難聴というと高齢者の問題と思われる人も多いかと思います。
確かに、年齢を重ねるにつれて耳の機能が衰えてきます。
しかし、最近は若年層においても難聴を訴える人が増えてきているというのです。
イヤホンやヘッドホンをよく使用している人や、ストレスなどで血液の流れが悪くなっている人など、気が付かないうちに難聴になっているかもしれませんよ。
今回は、難聴に関する話です。
ほとんどの人は詳しく聴力検査をしていない
一般的に視力検査は、ランドルト環を使った検査(Cのマークが空いている方向を答える)によって、“視力0.5”など具体的に数値化されています。
聴力の検査は、ヘッドホンをあて、「ピーッ」という音を確認して聞こえているか検査で、あなたの聴力は〇〇ですといった具体的な数字はありません。
健康診断などの聴力検査では、高音(4000Hz)と低音(1000Hz)の音を利用して、それぞれが聞こえているか検査します。
きちんと聴力を検査するには、125Hz、250Hz・・・1000Hz、2000Hz、8000Hz と様々な周波数の音で検査をする必要があります。
音の強さを表す、デシベル(dB)
ヘルツ(Hz)は、音の高低を表すものですが、どれくらい聞こえるかという場合には、“デシベル(dB)” という単位を基準として判断します。
日本では聴力障害者として認定されるには、“両耳で70dB以上の音でないと聞き取れない、また片耳が50dB以上もう片方が90dB以上でないと聞き取れない” といった基準があります。
通常の会話は40dB程度といわれています。60dB以上になると、多くの人が「うるさい!」と感じ、80dB以上になると騒音だと感じるレベルの音量です。
日本では、かなり大きな音が聞こえない状態でないと聴力障害として認定されませんが、欧米諸国では40dBの音が聞こえない場合にも聴力障害として認定されることもあり、WHO(世界保健機関)では41dB以上の音が聞こえない場合には補聴器の装用を推奨しているほどです。
潜在的な難聴の人の数は2000万人?!
テレビなどを観ていて、周りの人から音が大きいと言われたことありませんか?
難聴は自分自身では気が付かないことも多く、周りの人に指摘されて判明することがよくあります。
聴覚障害者としての人数の統計はとられていますが、難聴の人の数は正確には把握されていません。
日本補聴器工業会の試算(2015年)では、日本国内における難聴者数は推定で約2000万人近くと発表されています。
自分自身で聞きづらいと感じるようであれば、すでに難聴になっている可能性が高いです。
難聴は、特別な症状ではなく、視力でいうところの近視や遠視などと同じように誰でもなる可能性があります。
“脳は必要な音しか受け入れない!”
耳は音を感知しますが、実際に音として認識するのは脳の役割です。
普段、わたしたちは様々な音に接しますが、それらを全て認識していては脳がパンクしてしまいます。
耳で感知したものを脳が必要なものだけを選択して音として認識しているのです。
会話がかみ合わない! 難聴が原因かもしれません
誰かと会話をしているとき、何だか会話がかみ合わないなどありませんか?
そのコミュニケーションの問題は、難聴が原因かもしれません。
人と人が会話をするときには、耳で話を聞いているだけでなく、相手の表情や口の動きを読んだり、話の流れから内容を憶測したりしています。
つまり、少し聞こえづらい状態であっても気づかないことがあるのです。
新型コロナウイルスの影響もあり、マスクの着用する機会が多くなりました。
マスクで口元が見えなくなってしまうことで、口の動きが読めなくなり会話がスムーズにいかないといったケースが増えています。
会話がかみ合わないことが多いなど、コミュニケーションがうまくできないときは難聴になっている可能性もあります。
難聴になると、うまくコミュニケーションがとれずに周囲との会話などが減り、自分の世界に引きこもりがちになります。そうすると、耳や脳などへの刺激が少なくなり、さらに難聴が進むといった悪循環になります。
会話をすることは、いろいろな意味でとても重要なのです。
自分の声が変な感じに聞こえる?!
音は空気などが振動することで発生し伝わります。音の振動を伝えるのは空気だけでなく水や金属などもあります。糸電話なんてやったことがある人もいるかもしれませんね。
わたしたち人間は主に耳で振動を音として感知していますが、実際には耳以外でも音の振動を感知しています。
自分自身の声を録音して聞いてみると違和感があると思います。
これは自分自身の声は、耳で聞いているのと同時に、私たち自身の骨(頭蓋骨)の振動を音として感知しているのです。
なので、録音して聞いた自分自身の声は主に耳だけで振動を感知することになるので違和感が生じるのです。
録音するなどして聞いた自分自身の声に違和感があるのは誰でも起こりうることなので安心しましょう。
“動物のすごい能力!足裏で情報をキャッチ?!”
動物のなかには地面を伝わる振動を足の裏で感知している種があります。
ゾウは、足の裏で地面の振動を感知して何キロもの先の群れと交信をしたり、30キロ近くも離れた土地の天気(雨や雷など)を知ることができるいわれています。
難聴は高齢者だけの問題ではない
難聴は耳などの機能の衰えにより、主に高齢者に多くみられる症状ですが、近年は若年層においても難聴を訴える人が増えています。
近年、増えているものに突発性難聴というものがあります。多くの場合、片方の耳だけが聞こえづらくなり、めまいや耳鳴りなどの症状を伴うこともあります。
芸能人でも若い人が突発性難聴になったなんてニュースもときどき見聞きします。
また、ヘッドホン(イヤホン)難聴といわれるものも増加傾向にあります。長時間にわたり大きな音量で聞くことで耳に負担をかけ難聴を引き起こす危険性があります。
WHO(世界保健機関)でもヘッドホンなどによる難聴を問題視しており、“音暴露許容量” というガイドラインを示し、難聴予防活動を展開しています。
イヤホンで音楽を聴くとき、半分程度の音量でも80dBといわれます。
これは、走行中の電車内もしくはゲームセンターの店内で聞くのと同程度の音量になります。
イヤホンで周囲の人がわかるほど大音量で音楽などを聴いている人は相当大きな音量となっており、耳にかなりの負担をかけていることがわかります。
耳はとても複雑な働きをしている
耳は外側から外耳、中耳、内耳に分けられます。
音は外耳から鼓膜に伝わり、鼓膜で受け取った音の振動を内耳の“耳小骨”と呼ばれる小さな骨で何倍にも増幅させ “蝸牛” という部位へ送られます。そして蝸牛にあるリンパ液が揺れることで、有毛細胞が刺激され音の情報が電気信号となり脳へと送られる。
わたしたちが何気なく聞いている音は、このように複雑な働きによって認識することができているのです。
“耳は音だけでなくバランス感覚も感知している!”
内耳には蝸牛のほかに、身体のバランス感覚を司る働きをしている三半規管(回転などを感知)や前庭(重力などを感知)という部位があります。ここで頭部や身体の傾きや回転運動を感知しています。
耳は音だけでなく身体のバランス感覚も感知しているのです。
難聴は原因の特定が難しい?
難聴は耳の外耳、中耳、内耳に何らかの問題が起こったときに発生します。
“耳垢がたまっている” や “鼓膜が破れた” といった外耳に起こる問題の難聴は、目視で確認できるため比較的に治療がしやすいことが多いです。
ただ、よく言われる難聴は中耳や内耳といった複雑な構造をもつ部分に問題があることが多いため原因の特定や治療が難しいのです。
難聴を訴える代表的な疾患として、“突発性難聴” や “メニエール病” というものがありますが、どちらも特定する検査法はなく症状や様々な状況から判断されることになります。
また、耳の問題で “耳鳴り” もよくある症状ですが、頻繁に起こる耳鳴りは耳の状態が悪化している、すなわち難聴のサインの可能性があります。
メニエール病は、ぐるぐる目がまわったり、耳鳴りや難聴といった症状があり厚生労働省の特定疾患に指定されています。
メニエール病の原因は不明ですが、内耳のリンパ液が過剰になっているケースが多くみられることから浸透性利尿剤が使用されます。
耳を良い状態にするには?
何気なく使用しているヘッドホンやイヤホンは、知らず知らずのうちに耳に負担をかけている可能性があります。
耳に限ったことではありませんが、長時間にわたり過度な負担をかけることはよくありません。
人間の聴力は半日程度休ませると回復するといわれています。
ヘッドホンやイヤホンなどを日常的に使用する人は、意識して耳を休ませてあげることが大切です。
過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、血流が悪くなります。
耳は繊細な組織であるため、血流が悪くなることによって、きちんと機能せず難聴になる可能性があります。
また、難聴が気になるようであれば、自分が心地よいと思える音楽を聴いたり、積極的に人と会話をすることが大切です。
人間のさまざまな機能は、適度に使用しないと健康な人であっても衰えてしまいます。
そして睡眠不足は、細胞や組織の再生を促す成長ホルモンの分泌が減ってしまい、耳の機能がきちんと回復しなくなってしまうので避けましょう。
聞こえづらいというのを放置しないことが重要です。
“腸の調子をよくすると耳もよくなる?!”
腸と耳は全く関係がないように思えますが、内臓に疾患がある人は難聴になりやすいという研究データがあります。
また、糖尿病や腎臓病を患っている人では難聴になるリスクが高いというデータも。
美容や健康において、腸内環境を整えることは重要といわれますが、耳にとっても良いことなのかもしれません。
この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
最後までご覧頂きありがとうございました。