医療機関において医薬品を購入するとき、たいていの品目で、ある程度小さな包装単位が販売されていますが、品目によってこんな大きな包装は必要ないと思ったことありませんか?
10錠だけ必要なのに、販売しているものが1箱1000錠だったり・・・なぜ1箱10錠の包装が販売されていないのか。
薬価基準収載医薬品の包装単位について薬剤師が解説します。
もっと少ない包装単位で販売してくれないの?
在庫整理をしていたら、しばらく処方されていない薬が
いくつか見つかったのよね。
このままだと廃棄することになってしまうかも・・・
後発医薬品など品目が増えると在庫管理も大変ですよね。
調剤薬局では毎年、
数十万円にも及ぶ廃棄薬品が発生しているといわれます。
もっと小さい包装単位で販売してくれたら
廃棄薬品も少なくなると思うんだけど。
薬価基準収載医薬品の包装単位には基準があるのです。
医薬品製造メーカーは、
この基準をもとに販売する包装単位を決めています。
薬価基準収載医薬品の包装単位には基準がある
医薬品の小包装の供給については保険医療機関および保険薬局から強く要望されています。
小さな包装単位があることで余計な在庫を抱えることもなくなり、また医薬品の品質管理も適正に行うことができます。
医薬品の使用及び管理の適正化、医薬分業の推進等の観点から小包装医薬品のより適正な供給を図っていく必要があると、業務局長より日本製薬団体連合会長へ昭和59年6月2日付け薬発第412号にて包装単位基準が通知されています。
通知の内容については以下のようになっています。(一部省略)
- 標準小包装以下の包装単位の製品を少なくとも1種類は供給すること。ただし、当該医薬品の通常の用法、用量、使用実績等から合理的と判断される範囲内において、これより若干大きい包装を最小包装単位として供給することは差し支えない。
- 前記1の規定は、市場において当該標準小包装に対する需要がないか、あるいは極端に少ないと判断されるものについては、これを適用しない。
- 許容大包装を上回る包装単位は供給しないこと。
- 標準小包装の基準に掲げられてない剤型については、類似する剤型の準じること。
前記2において、「需要がないか、あるいは極端に少ないと判断される」可能性がある例として、おおむね次に掲げるような事項が考えられる。
①適応症が慢性疾患である等1人の患者に対して長時間継続定期に投与される薬剤であること。
②解熱鎮痛剤等一般的な適応症を持ち、比較的多数の患者に対して処方される薬剤であること。
③1人1日当たりの使用量が比較的多量な薬剤であること。
④賦形剤、溶剤等の製剤補助剤であること。
長い説明文になりましたが、簡単にいうと以下のような内容です。
- 原則として、できるだけ小さい包装を市場に供給しましょう。
- ただし、多くの人が罹る疾患または長期間にわたり使用する可能性の高い医薬品、そして1度に使用する用量が多い医薬品については大きい包装で供給してもいいですよ。
このように、医療機関と医薬品製造メーカーが、お互いに負担にならないように一定の基準が設けられているわけですね。
標準小包装・許容大包装とは?
では、具体的にどのような基準となっているのでしょう。
剤型ごとに標準小包装・許容大包装というものがあります。
前述の包装単位基準に示されている標準小包装・許容大包装とは、おもに以下のようになっています。
剤 型 | 標準小包装 | 許容大包装 |
錠剤・カプセル剤 | 100錠(カプセル) | 6000錠(カプセル) 〔抗生物質については600錠(カプセル)〕 |
散・末・顆粒剤 | 100g | 5000g |
シロップ剤 | 500mL | 2000mL |
注射薬 | 10管(瓶) | 200管(瓶) 〔抗生物質については50管(瓶)〕 |
軟膏・クリーム剤 | 10本 | 50本 |
吸入剤 | 5本 | 50本 |
点眼・点鼻・点耳薬 | 5本 | 50本 |
パップ剤 | 1kg | 18kg |
液剤 | 100mL | 18L |
坐剤 | 50個 | 1000個 |
鎮痛消炎剤及びニトログリセリン系プラスター | 50個 | 1000個 |
このように、それぞれの剤型について標準小包装・許容大包装があり、この包装単位以下の製品を供給するように基準が設けられています。
製造メーカーとすればできるだけ大きな包装のほうが都合がよいと考えることもあるかもしれませんが、とんでもない大きな包装単位が販売されていないのも、この基準があるためです。
錠剤やカプセル剤で100個単位の包装が多くみられるのは
このような基準があるためです。
小包装の供給についての相談・苦情などは医師会、歯科医師会又は薬剤師会が窓口
保険医療機関からの薬価基準収載医薬品の包装単位についての相談・苦情については都道府県医師会、歯科医師会又は薬剤師会が窓口となっています。
これらを通じて関係団体と協議し医薬品の包装単位が変わることもあります。
また、卸業者があいだに入って相談・苦情を吸い上げてもらえる場合もありますので、ご意見がある方は相談されてもよいかもしれません。
この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。