副作用が少ないイメージのある漢方薬
漢方薬は自然のものだから副作用がないと信じている方もいるほどです。
そんな漢方薬も注意しなければいけない副作用があります。
今回は、その漢方薬で注意しなければならない副作用のうち甘草を含むものについて解説します。
漢方薬も薬!副作用はある

漢方薬って副作用が少ないイメージがあるけど
何か注意しなければいけないことあるの?

確かに漢方薬は化学医薬品に比べてマイルドなイメージがありますが、
注意しなければならない副作用もありますよ。
複数の漢方薬を服用されている場合では甘草の量が問題になりますね。

甘草!?
確か葛根湯には含まれている生薬だよね?

甘草は多くの漢方薬に含まれている生薬で、
偽アルドステロン症を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
甘草を含む漢方薬
「甘い草」、その名の通りにショ糖より何十倍もの甘味を持つグリチルリチン酸を多く含む生薬。
古くから薬として使用されてきた甘草ですが、今日も多くの漢方薬にふくまれています。代表的なものとしては、かぜ薬として知られる葛根湯があります。
日本で使用されている医療用漢方薬では、70%近くの品目に甘草が含まれています。
下記は甘草を含む主な医療用漢方薬です。
甘草を含む漢方薬(それぞれ1日量あたりの甘草の含有量)
※株式会社ツムラの医療用漢方製剤を参考に掲載しています。赤字は単品で甘草含有量が2.5gを超えるもの
- 安中散 1.0g
- 黄耆建中湯 2.0g
- 温経湯 2.0g
- 加味帰脾湯 1.0g
- 桔梗湯 3.0g
- 荊芥連翹湯 1.0g
- 桂枝加朮附湯 2.0g
- 桂枝人参湯 3.0g
- 五積散 1.0g
- 柴陥湯 1.5g
- 柴胡清肝湯 1.5g
- 酸棗仁湯 1.0g
- 四逆散 1.5g
- 十全大補湯 1.5g
- 潤腸湯 1.5g
- 小柴胡湯加桔梗石膏2.0g
- 参蘇飲 1.0g
- 清上防風湯 1.0g
- 川芎茶調散 1.5g
- 大防風湯 1.5g
- 治打撲一方 1.5g
- 通導散 2.0g
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯2.0g
- 二朮湯 1.0g
- 人参養栄湯 1.0g
- 白虎加人参湯 2.0g
- 防風通聖散 2.0g
- 麻杏甘石湯 2.0g
- 抑肝散 1.5g
- 立効散 1.5g
- 苓姜朮甘湯 2.0g
- 胃苓湯 1.0g
- 黄連湯 3.0g
- 葛根湯 2.0g
- 加味逍遙散 1.5g
- 帰脾湯 1.0g
- 桂枝加芍薬湯 2.0g
- 桂枝加竜骨牡蛎湯2.0g
- 啓脾湯 1.0g
- 五虎湯 2.0g
- 柴胡桂枝乾姜湯2.0g
- 柴朴湯 2.0g
- 滋陰降火湯 1.5g
- 四君子湯 1.0g
- 升麻葛根湯 1.5g
- 小建中湯 2.0g
- 小青竜湯 3.0g
- 神秘湯 2.0g
- 清心蓮子飲 1.5g
- 疎経活血湯 1.0g
- 竹筎温胆湯 1.0g
- 調胃承気湯 1.0g
- 桃核承気湯 1.5g
- 当帰建中湯 2.0g
- 二陳湯 1.0g
- 女神散 1.0g
- 排膿散及湯 3.0g
- 平胃散 1.0g
- 補中益気湯 1.5g
- 麻杏薏甘湯 2.0g
- 抑肝散加陳皮半夏 1.5g
- 竜胆瀉肝湯 1.0g
- 苓桂朮甘湯 2.0g
- 越婢加朮湯 2.0g
- 乙字湯 2.0g
- 葛根湯加川芎辛夷2.0g
- 甘麦大棗湯 5.0g
- 芎帰膠艾湯 3.0g
- 桂枝加芍薬大黄湯2.0g
- 桂枝湯 2.0g
- 香蘇散 1.5g
- 五淋散 3.0g
- 柴胡桂枝湯 2.0g
- 柴苓湯 2.0g
- 滋陰至宝湯 1.0g
- 芍薬甘草湯 6.0g
- 十味敗毒湯 1.0g
- 小柴胡湯 2.0g
- 消風散 1.0g
- 清暑益気湯 1.0g
- 清肺湯 1.0g
- 大黄甘草湯 2.0g
- 治頭瘡一方 1.0g
- 釣藤散 1.0g
- 当帰飲子 1.0g
- 当帰湯 1.0g
- 人参湯 3.0g
- 麦門冬湯 2.0g
- 半夏瀉心湯 2.5g
- 防已黄耆湯 1.5g
- 麻黄湯 1.5g
- 薏苡仁湯 2.0g
- 六君子湯 1.0g
- 苓甘姜味辛夏仁湯2.0g

このように多くの漢方薬に甘草が含まれています。
数種類の漢方薬を服用する場合には、甘草の総量に注意が必要です。
甘草は1日2.5g以上では注意が必要
甘草には主成分としてグリチルリチン酸が含まれています。
グリチルリチン酸は過剰に摂取することで、【偽アルドステロン症】という副作用が起こる可能性があります。
甘草の量が1日2.5g以上では注意が必要です。そして甘草の最大許容量は1日5.0gが目安となります。

グリチルリチンはショ糖の100~200倍近くの甘味があり、食品添加物(甘味料)として多くの食品に含まれており、気づかないうちに多く摂取している可能性があります。
ちなみに甘草1g中には、おおよそ40mgのグリチルリチン酸が含まれています。
注意が必要な副作用、偽アルドステロン症

ちなみに偽アルドステロン症とは
どのようなものかわかりますか?

名前は聞いたことがあるけど、
詳しくはわからない・・・

偽アルドステロン症とは血清カリウム値が低下し、
逆に血清ナトリウム値が上昇する状態のことです。
偽アルドステロン症とは?
甘草の主成分であるグリチルリチン酸の代謝物が腎臓でアルドステロンの代謝を阻害することで、あたかもアルドステロンが過剰になったかのような状態になります。
このように血中のアルドステロンの濃度は変わらないのに、アルドステロン症のような症状が現れるのを “偽アルドステロン症” といいます。
偽アルドステロン症の主な症状は、手足の倦怠感や痺れ、つっぱり感、脱力感、こむら返りなどがあります。

アルドステロンとは腎臓にある副腎皮質から分泌されるホルモンで、腎臓でのナトリウムやカリウムの排泄を調節しています。アルドステロンが上昇することでナトリウムの再吸収が増加し、それに伴いカリウムの排泄が増加します。
甘草だけではない!グリチルリチン酸を含む医薬品
グリチルリチンには肝臓の機能を改善させる作用や、抗炎症作用、抗アレルギー作用などがあり、漢方薬以外の医薬品でも使用されています。
グリチルリチン製剤としては、グリチロン錠や強力ネオミノファーゲンシーなどがあり、S・M配合散やFK配合散にはカンゾウ末として含まれています。
また、食品添加物(甘味料)としてもさまざまな食品に含まれています。
このように、グリチルリチンは甘草だけでなく様々な医薬品などに含まれているので、併用薬がある場合など注意が必要です。

利尿剤(ループ利尿剤、サイアザイド系利尿剤)を使用している場合にはカリウムの排泄が促進され、より一層“偽アルドステロン症”の危険性が高まります。
高齢者は特に注意が必要
甘草の過剰摂取で問題となる偽アルドステロン症ですが、高齢者の方は腎臓の機能が低下していることがあり、その危険性がより一層高まる可能性があります。
また、複数の医薬品を使用していることも多くみられるため、甘草を含む漢方薬を使用している場合には、血中のK(カリウム)濃度を定期的にチェックするなど“偽アルドステロン症”に注意が必要となります。
この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。