東洋医学では、生き物には “精” というものが存在し、これが失われていくことで人は老化していくという概念があります。
これは、わたしたちの生命エネルギーのことで腎に貯えられているといわれます。
この “精” を補う漢方薬で基本となるのが六味丸です。
今回は東洋医学における “精” の概念や関係する漢方薬について解説します。
人は “精” によって成長し、“精” がなくなることで老化する
“精” という字は、「精も根も尽き果てる」、「精を出す」といった慣用句
東洋医学では、“精” とは人が成長、発育するのに必要な生命エネルギーのことです。
“精” があることで成長し、逆に精がなくなることによって人は老化していくと考えられています。
目に見えるものではありませんが、“精” という字は「精も根も尽き果てる」、「精を出す」など人が頑張る様子など、生命エネルギーを表すような慣用句としても使われています。
漢方など東洋医学もその発展とともに概念も少しずつ変わり、現在では “精” という概念は複雑になっており、簡単に表現するのは難しい面もあります。
“先天的な精” と “後天的な精”
“精” には、生まれた時からもっている “先天的な精” と、食事などの栄養物から得られる “後天的な精” があります。
“精”は常に変化するもので、人の成長などで使われた “精” は、質の良い食事や適度な運動などで “精” を絶えず補充する必要があるのです。
食事などで補いきれない場合には、漢方薬を活用することになります。
漢方において、腎とは本来の腎臓の機能である体内から不要なものを尿として排泄するというものだけでなく、あらゆる生命活動の源が存在すると考えられています。
子供の発育不良は “精” の不足?!
漢方において “精” は人が成長するうえで必要な生命エネルギーであるということから、子供の発育不良は “精” が不足していると考えられる。また、不妊や老化現象においても精という概念が使われることもある。
夜更かしや寝不足は、“精” を激しく消費するといわれ、生命エネルギーに満ちている若年者においても不規則な生活では “精” が不足する可能性があります。
こういった面からも、成長期にある幼少期は規則正しい生活を送ることが重要なのです。
“精”を補充する基本となる漢方薬【六味丸】
わたしたちの生命エネルギーである “精” を補充する漢方薬で基本となるのが六味丸です。
【六味丸】は、その名の通り6種類の生薬(地黄、山茱萸、山薬、茯苓、沢瀉、牡丹皮)が含まれている漢方薬です。六味腎気丸もしくは六味地黄丸と呼ばれることもあります。
地黄、山茱萸、山薬には滋養強壮作用があり、沢瀉、牡丹皮は体液などの循環をよくする作用があります。
医療用漢方薬の六味丸は、比較的に高齢の方における「頻尿、排尿困難」などに使用されますが、小児の夜尿症においても使用されるケースがあります。
小児の夜尿症は、膀胱の機能がまだ成熟していないため “精” を補充するという考えによるものです。
もともと中国では六味丸は小児の薬として使われていました。
八味地黄丸は、冷えの症状がある人に向いている
六味丸に桂皮と附子を合わせたものが八味地黄丸です。合わせて8種類の生薬が含まれています。
八味地黄丸は主に泌尿生殖器の問題(頻尿、排尿困難、前立腺肥大、陰萎)において処方されることが多い漢方薬で、八味腎気丸もしくは八味丸ともいわれ、生命エネルギーの根幹である腎の働きを高める作用があります。
桂皮と附子が含まれることで、冷えが原因と考えられる場合に八味地黄丸が有効です。
男女問わず泌尿生殖器・下半身の衰えがある場合に広く処方されています。
八味地黄丸は生命エネルギーを根幹を補充し、排卵時や受精時の高温期を維持させる意味で不妊の人へ処方されることもあります。
精の不足は生命エネルギーの低下させ、活動量が減ることで体温が低下します。冷えは万病のもとです。
いろいろな “精” を補う漢方薬
八味地黄丸に車前子と牛膝を合わせたものが牛車腎気丸です。つまり10種類の生薬が含まれている漢方薬です。
利用作用がある車前子と牛膝が入ることで、冷え性でむくみなどの症状がある人に向いています。
また、牛車腎気丸の適応症にはありませんが糖尿病性末梢神経障害にも有効であるという臨床データもあります。
六君子湯や小建中湯などは胃腸の働きを高めることで、後天の精を間接的に補充する漢方薬に分類されます。
“精”というものが成長そして老化防止に欠かせないものです。
漢方薬を上手に活用し、そして質の良い食事を摂取することで “精” を補うことで老化防止につながります。
この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
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