8割の医師が処方する漢方薬、その基本概念【虚実】・【寒熱】ついて薬剤師が解説  

漢方の基本的な概念である【熱と寒】

【熱と寒】とは体温計などの熱とは、ちょっと違います。漢方では症状や身体の状態に合わせて熱証や寒証と分類しています。

今回は熱証・寒証そして温める漢方、冷やす漢方について解説します。

 

漢方の基本概念【しょう】とは?

漢方では体質や症状によって使用する生薬を使い分けます。

その体質や症状を判断する際に使用されるのがしょうといわれるものです。

人それぞれ体格が違い、風邪などの疾患においても症状は違うため、当然、使用する生薬も変えるべきという考えです。

証には大きく分けて実証じっしょう」・「虚証きょしょう熱証ねっしょう」・「寒証かんしょう2つの種類があり、それぞれの「証」に合わせて何を処方するのかを決めることになります。

そのため風邪だから “葛根湯” といったように単純に決められるものではないのです。

漢方では、体質や症状など個々の状態を表すしょうをもとに処方が決められる。

また漢方では」「けつ」「すいという理論を用いて、より細かく「証」を分けることで、人それぞれにあったものを処方するといった考えもあります。

 

 

虚証と実証

【虚証】と【実証】は病気を考えるうえで現在、患者さんの状態にあるか把握するために使用する重要な指標です。

【虚証】とは本来あるべきものがない状態、【実証】とは本来あってはいけないものがある状態を意味しています。

元気がない、やる気がないなどは、本来あるべきものがないので【虚証】としてみなされます。逆に病原ウイルスに感染した場合には、本来あるべきではないウイルスがいるため【実証】とみなされます。

虚実については、まずは基礎的体力の有無と病気に対する抵抗性の有無の大きく2つの部類に分けて判断します。

 

【虚証】とは本来、身体にあるべきものがない(または少ない)状態、【実証】とは本来、身体にあってはならないものがある(または過剰にある)状態を表している。

虚証と実証を説明するのに、虚証は虚弱体質な人、実証は筋肉質でがっちりしている人と例えられることがありますが、虚弱体質な人は「虚証」、がっちりした人には「実証」が出やすいというだけで体格だけで【虚証・実証】は判断するのは間違いです。

 

熱証と寒証

“熱”というと発熱など体温をイメージがあるかと思いますが、漢方では“熱”というのは発熱だけでなく、病気の状態を示しています。炎症や乾燥も“熱”として扱います。

つまり【熱】と【寒】は症状などの状態を表しているものなのです。

また、病気が起こっている場所を示すものとして“表裏”というものがあり、【表】とは皮膚などの身体の表面、【裏】は内臓などの身体の内部を示しています。

 

・主な【熱証】の状態・・・体温が高い、炎症がある、ほてり、乾燥

・主な【寒証】の状態・・・体温が低い、代謝が悪い、冷え性、潤い

 

【熱証】とは、身体が過活動状態、【寒証】とは身体の機能が低下している状態を示している。

 

漢方においては、患者さんが発熱している状態でも寒いと感じているようであれば「寒証」、逆に熱が高くなくても火照ったような感じがあるのであれば「熱証」として治療の方針を決めることになります。

 

【温める生薬】と【冷やす生薬】

【熱証】・【寒証】などそれぞれの証に合わせて漢方薬が処方されます。

【熱証】には “寒” の作用がある生薬を、【寒証】には “熱” の作用がある生薬を用いることで、それぞれの症状を緩和させます。

“熱(温める)”・“寒(冷やす)” の作用がある生薬は主に以下のようなものがあります。

・熱(温める)主な生薬
桂皮(ケイヒ)附子(ブシ)、人参(ニンジン)、乾姜(カンキョウ)、山椒(サンショウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、麻黄(マオウ)

・寒(冷やす)主な生薬
黄連(オウレン)、黄ごん(オウゴン)、黄柏(オウバク)、山梔子(サンシシ)、石膏(セッコウ)、大黄(ダイオウ)、竜骨(リュウコツ)、知母(チモ)

附子(ブシ)、呉茱萸(ゴシュユ)、桂皮(ケイヒ)、乾姜(カンキョウ)は漢方では“大熱”と表現されるほど身体を温める作用が強い。※乾姜(カンキョウ)は日本では生姜と同じである。

 

医療用漢方薬などの添付文書の【効能又は効果】に記載されている “比較的体力があり~” という記載については日本独特の考え方である。

 

漢方薬の飲み方の注意点

漢方薬は食前もしくは食間に服用するように

添付文書などに記載されているけど何でかな?

食後ではなくて食前もしくは食間というのは、

理由がありますよ。

また、漢方薬は白湯さゆで服用するとよいというのも

聞いたことありませんか?

白湯?!

冷たい水じゃ駄目なの?

漢方薬を服用するのに白湯をつくるの面倒じゃない?!

冷たい水で服用して駄目ではないですが、

白湯でと勧めているのは理由があるのです。

ただ、逆に白湯ではない方がいい場合もあります。

 

漢方薬は食前に服用しなければいけない?

医療用漢方薬の添付文書には、用法として食前もしくは食間と記載されています。

漢方薬の有効成分には配糖体というものが含まれており、わたしたちの腸内にいる腸内細菌がこの配糖体を分解することで効果を発揮します。

食後の服用では、腸内細菌が他の食物などの分解に費やされてしまい漢方薬の配糖体の分解量が減ってしまうため食前もしくは食間の服用がよいとされています。

このように、漢方薬が食前もしくは食間の服用がよいのは生薬に含まれる配糖体を腸内細菌が分解しやすくするためとされていますが、食後でも全く効果がなくなってしまうわけではありません。

食前に飲み忘れた場合には、食後に服用するようにしましょう。

 

白湯で服用すると煎じた状態に近くなる

“漢方薬は白湯で服用” と聞いたことありませんか。

医療用漢方薬などを中心に飲みやすいように顆粒状や錠剤となっているものが多いですが、漢方薬はそもそも1日分をまとめて煎じて、それを1日かけて服用するものです。

漢方薬はお湯に溶かすことで香りや風味が高まり、薬効が引き出されるものです。また、お湯そのものが身体を温める効果もあり相乗効果が期待できます。

顆粒状や錠剤のものでも、白湯(お湯)で服用することで煎じた状態と似た状況になり、漢方薬の効果が高まります。

水で服用していて全然効果がなかったという方が、白湯で服用したところ効果がでるようになったという事例もあります。

白湯は人肌程度(40度くらい)が適切です。

のぼせた状態、吐き気がある場合などは、白湯で服用することで、さらに吐き気などの症状が増してしまう可能性がありますので、この場合は水で服用するようにしましょう。

 

参考記事⇒漢方薬には副作用がない?!そんなことはありません。注意すべき甘草(カンゾウ)について解説

 

この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

最後までご覧いただき有難うございました。

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