元気を取り戻す漢方薬【補中益気湯】 “気”を補う生薬、黄耆(オウギ)を含む漢方薬

漢方において “気” とは、わたしたちが活動するうえで原動力とされています。

やる気、元気など、目に見えるものではありませんが、精神的もしくは神経的なことが充実していることは健康で楽しく過ごすには重要な要素です。

この “気” を補う生薬として有名なのが黄耆おうぎです。今回はこの黄耆を含む漢方薬【補中益気湯】を中心に解説していきます。

 

元気を取り戻す漢方薬 【補中益気湯】

補中益気湯ほちゅうえっきとうには、人参にんじん、 黄耆おうぎ、 蒼朮そうじゅつ(もしくは白朮びゃくじゅつ)、 柴胡さいこ、 当帰とうき、 升麻しょうま、 陳皮ちんぴ、 生姜しょうきょう、 大棗たいそう、 甘草かんぞう の10種類の生薬を含む漢方薬です。

胃腸の働きをよくすることで体力を回復させ、“気” を補充することで元気を取り戻します。

疲れ、食欲不振、胃弱、夏やせ、長引く風邪や手術後などで体力が弱っているときによく処方されます。

補中益気湯の「中」という字は身体の真ん中、すなわち胃腸を表しています。つまり、胃腸に気を補うという漢方薬という意味がこめられているのです。

 

 

“気” を補う生薬 “黄耆”

補中益気湯に含まれる黄耆おうぎ(オウギ)は、“気” を補う生薬として代表的なものです。

“気” が不足すると皮膚などが緩み、必要な水分などが漏れ出てしまうとされ、黄耆は皮膚などを引き締めて皮膚から漏れ出ないようにさせる作用があります。

これにより異常な発汗を止める働きをします。

また、“気” が不足してくると重力により筋肉が緩み、さまざまな部分が垂れ下がり胃下垂や脱肛、足のむくみ、子宮下垂などの症状を引き起こすとされます。

黄耆は、緩んでしまった筋肉に適度な刺激を与えることにより本来あるべき位置にもどす働きもあります。

 

“夏バテ” には【清暑益気湯】

夏の暑さによる、“食欲がない” “寝不足でだるい” などの “夏バテ” 症状には、異常な発汗を抑え体内に水分を貯める【清暑益気湯】が向いています。

【清暑益気湯】には、【補中益気湯】に含まれていない 五味子ごみし という生薬が含まれています。

清暑益気湯に含まれる生薬の五味子ごみしは異常な発汗を抑える作用があります。

また、身体を冷やす麦門湯と黄柏ふおうばくも含まており、大量に汗をかくような夏バテに効果があります。

五味子は酸っぱい味のする生薬で、東洋医学や薬膳では “酸っぱい味)=引き締める(収れん)” という考え方があります。

 

“黄耆” を含んだ漢方薬

“気”を補う生薬の“黄耆” を含んだ漢方薬はいくつかあります。

【黄耆建中湯】、【防已黄耆湯】など、漢方薬の名称のなかに黄耆が含まれているものはわかりやすいですが、ほかにも以下のようなものにも黄耆が含まれています。

“黄耆” を含む漢方薬

補中益気湯、七物降下湯、、半夏白朮天麻湯、十全大補湯、帰脾湯、大防風湯、当帰飲子、当帰湯、人参養栄湯、清暑益気湯、加味帰脾湯など

このように、“気” を補う生薬として様々な漢方薬に配合されています。

 

10種類の生薬を含む【十全大補湯】

その名の通り、10種類の生薬を含む【十全大補湯】も元気のない人によく処方される漢方薬です。

血の巡りを良くする、当帰とうきせんきゅう、そして“気”を補い元気にする、人参、黄耆おうぎ地黄じおうや水分の循環を改善するの蒼朮そうじゅつ茯苓ぶくりょう を含みます。

【十全大補湯】の「全」という字には、このように “血気水” すべての要素を改善して病気を全快させるという意味がこめられています。

貧血気味で冷え性の人や病中・病後などで体力が衰えている場合によく使われる漢方薬です。

身体に大きな負担のかかる抗癌剤治療を行う際に、一緒に処方されることもあります。

 

水太りに【防已黄耆湯】

防已黄耆湯ぼういおうぎとう】は、水分の循環がうまくいかず、汗をたくさんかくのに尿の量が少なく浮腫みがでるという、水太りタイプの肥満症に使用されることが多い漢方薬です。

水太りタイプの肥満症は、女性に多くみられます。

黄耆により異常な発汗を抑え、防已ぼういや•蒼朮そうじゅつ(もしくは白朮びゃくじゅつ)が利尿作用を高めることで余分な水分を排出させるように働きます。

 

この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

最後までご覧いただき有難うございました。

 



 

 

 

 

 

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