薬局経営に直結する薬価差!薬価差≠利益ではありません。

薬局の経営において、薬価差を考えることは重要なことです。

保険診療にて使用される医薬品は、国が薬価というものを定めて全国一律で同じ価格となっています。

この薬価と仕入れた価格の差が薬価差といわれるものになります。

この薬価が大きければ薬局の利益も増えるわけですが、単純に薬価差≠利益ということではありません。

今回は薬価差と利益の関係についての話です。

 

薬価差≠利益ではない!

薬価とは患者さんに薬をお渡しするときに請求する価格のことです。

この薬価よりも安い価格で仕入をすることができれば、その差額が利益となるということは理解されている方も多いでのはないでしょうか。

もちろん薬価差が利益となるという考えは正しいことですが、これだけでは重要な事柄が抜けているのです。

その重要な事柄とは “消費税” です。

では、消費税がどのように薬価差と利益に関係してくるのでしょうか。

 

消費税は仕入だけに課税される

わたしたちが、買い物をする際には10%の消費税が課税されています。

商品を販売する小売店は、商品を仕入れる際に消費税が課税されています。もちろん薬局が卸売業者から医薬品を仕入れる際にも消費税が課税されています。

しかし、患者さんに薬をお渡しする際には消費税を請求することはできないのです。

国民健康保険、社会保険などの保険を使用した公的医療については非課税と国によって決められています。

消費税を請求できない薬局は損をしている?!

患者さんにお薬を渡すときには消費税を請求できないのに、薬局が医薬品を仕入れるときには消費税が課税されるなんて、薬局が一方的に損をしているのでは??と考えてしまいますよね。

医薬品の仕入の際に消費税が課税されるならば、患者さんからも消費税を課税すればいいのでは???

これについて厚生労働省は “消費税の導入や引き上げ時には、診療報酬や薬価改定を行い医療機関等が仕入れに際して支払う消費税に応じた上乗せ措置を行っている” としています。

つまり、患者さんに請求できない消費税分は薬局が損しないように考慮していますよということです。

健康診断インフルエンザ予防接種美容整形金歯などの保険を使用しない自由診療といわれるものについては消費税が課税されます!



利益は薬価差に消費税を含めて考えよう

例えば薬価が100円の医薬品を患者さんに渡すときに請求できる価格は、消費税を課税することができないので100円となります。

この薬価100円の医薬品を卸売業者から90円で仕入れたとすると、消費税が課税されるので実際には99円を負担することになります。

(※患者さんの窓口負担割合などは考慮せずに計算しています。)

消費税を考慮した利益は、

100円(患者さんにお渡しする価格)-99円(仕入れた金額)=1円

ということになります。

薬価に対して10%引きで仕入をしたのに消費税が課税されるため、実際には1%の利益となるのです。

薬価差率が10%だと利益がないと勘違いされている方も多いですが、上記のように薬価差率10%でも利益はでるのです。

 

薬価差率と利益率の関係

薬価差率とは薬価に対して卸売業者などからどれほどの割引で仕入れたかを示すもので、以下のように算出します。

薬価差率(%)=(薬価-納入価)/薬価×100

これに対して仕入に消費税を考慮して算出したものが、税込薬価差率となり、以下のように算出します。

税込薬価差率(%)=(薬価-納入価×1.1)/薬価×100 ※消費税は10%とする。

すなわち 税込薬価差率が利益率 となります。

 

これらをもとに薬価差率がA%だとするとの利益率は A-(100-A)/10 で算出することができます。

※具体的な薬価差率と税込薬価差率[利益率]の関係

薬価差率8% ⇒ 税込薬価差率[利益率]-1.2

薬価差率9% ⇒ 税込薬価差率[利益率]-0.1

薬価差率10% ⇒ 税込薬価差率[利益率]1

薬価差率11% ⇒ 税込薬価差率[利益率]2.1

薬価差率12% ⇒ 税込薬価差率[利益率]3.2

薬価差率13% ⇒ 税込薬価差率[利益率]4.3

薬価差率14% ⇒ 税込薬価差率[利益率]5.4

薬価差率15% ⇒ 税込薬価差率[利益率]6.5

薬価差率16% ⇒ 税込薬価差率[利益率]7.6

薬価差率17% ⇒ 税込薬価差率[利益率]8.7

薬価差率18% ⇒ 税込薬価差率[利益率]9.8

薬価差率19% ⇒ 税込薬価差率[利益率]10.9

薬価差率20% ⇒ 税込薬価差率[利益率]12

上記の関係から薬価差率が、およそ9.1%を上回ってはじめて利益がでることになります。逆に言えば、これを下回ると医薬品を売れば売るほど薬局として損するということになってしまいます。

 

薬価差率が1%違うだけでも大きな差に!

上記のように、薬価差率が1%違うと税込薬価差率[利益率]は1.1%の差がでることがわかります。

月に1000万円の医薬品を仕入れしている薬局で、薬価差率が1%が変わることで月に11万円、年間にすると132万円もの差がでることになるのです。

このように、薬価差率の数%の違いが薬局の経営に与える影響が大きくなります。

以前は、薬価差率も大きく医療機関にとって大きな収入源となっていあましたが、近年は薬価差で儲けるというのは難しい状況になりつつあります。

薬価は国で定められた価格であるため変えることはできません。そのため仕入額を改善することが医療機関の経営状況の改善に直結します。

毎年実施されることになった薬価改定

薬価は、2年1回に見直しが行われていましたが、2021年より毎年実施されることになりました。

例えば、これまで薬価が300円の医薬品が薬価270円に引き下げられた場合、薬価差率が15%で同じであったとしても利益は、2円下がってしまうことになります。

このように同じ薬価差率で仕入をしていたとしても薬価そのものが下がることによって利益は減ってしまうのです。

薬価が下がることは、患者さんにとっては負担額が減るためメリットがありますが、医療機関などにとっては収入が減少してしまうため悩ましい問題でもあります。

 


この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

最後までご覧いただき有難うございました。

 

 

 

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